おしらせ

令和7年度通常総会を開催しました

 令和7年6月25日(水)午後6時30分から二戸地区合同庁舎において、当NPO法人令和7年度通常総会を開催しました。

 冒頭に当NPO法人髙橋理事長より、以下のとおり挨拶をいたしました。


令和7年度通常総会 理事長挨拶

皆さま、本日はお忙しい中、私たちのNPOの社員総会にご出席いただき、誠にありがとうございます。
日頃より、地域医療連携や情報共有の取り組みにご理解とご協力をいただいていること、あらためて御礼申し上げます。

さて、本日は開会にあたり、少し変わった切り口から私たちの活動の本質に関わる話をさせていただきたいと思います。それは、「お米」と「医療情報」の話です。

最近、お米の価格が高騰し、供給の不安定さが報道されています。一見まったく関係がないように見えるこの話題と、私たちが日々取り組んでいる医療情報の共有には、実は共通点があります。

それは、「必要なものを、必要な人に、必要なタイミングで届ける」という“流通”の課題です。
ところが現実には、それがうまくいっていない場面が多く見られます。

お米の場合、生産者から卸、小売を経て消費者に届くまでの流れが複雑になると、在庫や価格の情報が正しく伝わらず、必要なところに必要な量が届かなくなります。 
医療情報も同様で、患者さんの情報がかかりつけ医から紹介先病院、退院後の介護施設へと受け渡される過程で、情報が途切れたり、古いまま使われたり、誰が責任を持って伝えるのかが曖昧になることがあります。

つまり、「つながっているようで、実は断絶している」という構造的な問題が、米の流通にも、医療情報の共有にも共通して存在しているのです。

ただし、違いもあります。お米は“物”ですから、多少遅れても、他の手段で代替が可能です。
しかし医療情報は違います。診療の現場では、その情報があるかないかで、命にかかわる判断が求められることがあります。

そして、もう一つ決定的な違いがあります。それは、「守秘義務」という倫理の壁です。
医療情報には、患者さんの人生そのものが含まれています。誰にでも見せてよいものではなく、情報はただ“共有すればよい”のではなく、“必要な人に、必要な範囲で、適切な方法で伝える”という設計が求められます。

米の流通では、経路の簡素化や在庫情報の見える化が求められていますが、私たちもまた、複雑化した医療情報の流れを整理し、ICTやクラウドを活用して、「守りながら、つなぐ」情報インフラの構築を進めていかねばなりません。
なぜなら、医療情報の共有とは、単なる“データのやり取り”ではなく、「命と信頼を扱う責任の受け渡し」だからです。

皆さんの中には、「病院では電子カルテ、訪問看護やケアマネジャーには独自の記録や書類があり、さらにkintoneへ入力するのは二度手間だ」と感じておられる方も多いと思います。
実際、これは現状における最大の課題の一つであり、私たちも強く認識しています。

現場で使用しているICTシステムがそれぞれ独立しているため、情報のやり取りがスムーズにいかないという声は各地から聞かれます。日本全体としても、医療・介護・福祉を横断したICTシステムの一元化については、いまだ見通しが立っていないのが実情です。

しかし、全国を見渡しても、すべての職種が同一のICTシステムで医療・介護情報を一元管理している地域は、まだ存在しません。
また、このような仕組みづくりにすら着手できていない地域が多い中で、私たちの地域はすでに一歩踏み出している、極めて先進的な取り組みを行っていると自負しています。

だからこそ、多少の不便や手間があることも承知のうえで、住民の皆さんの命と安心のために、どうかもうひと踏ん張り、もうひと工夫、そしてもうひと協力をお願いしたいのです。

今日この場にお集まりの皆さんは、地域の医療・介護・福祉の最前線で、連携の力を信じて動いてこられた方々です。この話が、皆さまの現場での多職種連携や情報共有のあり方を見直すきっかけになれば幸いです。

最後に、こうした“重要な情報”をどう社会全体で支えていくかという視点にも少し触れておきたいと思います。

食料も医療情報も、人が安心して生きていくうえで欠かせないものです。
だからこそ、「誰かがなんとかしてくれる」と他人任せにせず、一人ひとりが自分事として捉え、守り育てていく姿勢が必要です。

たとえば、患者さんの情報を一つひとつ丁寧に引き継ぐこと。あるいは、食料の背景にある生産や流通の現場に少しだけ目を向けること。それは派手な活動ではないかもしれませんが、そうした小さな労力の積み重ねこそが、社会全体の“流通の質”を高めていくのだと思います。

情報や資源の流れを、ただ“速く・便利に”するだけではなく、“信頼をもって手渡せる社会”をつくること――
それこそが、私たちが担うべき責任ではないでしょうか。

もう一点、考えておきたいのが「記憶の風化」です。

物価や流通の問題は、一時的に注目されても、やがて忘れられがちです。
たとえば以前、キャベツが高騰し、スーパーでは一玉500円を超えることもありました。あれほど話題になったのに、今ではすっかり忘れられています。

しかし、医療情報の共有については、忘れてはいけません。
“今は大丈夫そうだから”ではなく、地道に、確実に、継続的に取り組みを続けていくことが、未来の患者さんの命と安心につながります。

本日の総会は、こうした理念のもとに、私たちのこれまでの歩みと、これからの一歩を共有する場です。
どうか本日一日、皆さまの知恵と経験を持ち寄り、地域に根ざした“守りながらつなぐ仕組みづくり”を、ともに考えてまいりましょう。

なお最後にひとつ――
医療情報というセンシティブなテーマを、お米やキャベツに例えるという乱暴な話をしてしまいました。申し訳ございません。

本日はどうぞよろしくお願いいたします。

特定非営利活動法人カシオペア医療介護支援センター
理事長 髙橋 浩

 また、来賓として、二戸保健所次長の小守林靖一様と九戸村村長の大久保勝彦様にご臨席を賜り、ご祝辞をいただきました。(要旨、以下のとおり)


   二戸保健所 次長 小守林 靖一 様

 平成22年、このセンターの前身となる組織としてカシオペア地域医療福祉連携研究会、通称ひめほたるネットが立ち上げられて以降、これまでも関係者の連携が図られてきたところですが、令和4年、新たにカシオペア医療介護支援センターが設立され、この間、ICTを活用したカシオペアNETにより医療・介護・行政の円滑な情報共有が進んできたものと承知しております。
  在宅医療につきましては、岩手県保健医療計画におきまして、必要な連携を担う拠点を各圏域で位置付けることとされ、二戸地域においては、このセンターがその拠点として位置付けられております。そのため、このセンターには、地域包括ケアシステムを踏まえた在宅医療の提供体制を整備するという観点から、関係機関との調整はもちろんのこと、在宅医療に関する研修の実施や地域住民への普及啓発など、様々な支援を包括的かつ継続的に提供されることが求められています。引き続き、住民の皆様が安心して生活できる地域の実現に取り組まれるようお願いいたします。

 


   九戸村長 大久保 勝彦 様

 二戸広域市町村を代表いたしまして、一言お祝いの言葉を申し上げます。
 我が国は本格的な人口減少社会を迎え、また当カシオペア地域におきましても少子高齢化、人口減少が進展し、さらに住民意識の多様化などにより、地域の在りよう、姿が大きく変化していく激動の時代を迎えようとしていると感じているところでございます。
 医療介護に携わる担い手の不足も大変心配される中で、これからの医療や介護あるいは福祉との連携をどのように進めていくかということが大きな課題であると捉えております。
 行政といたしましても、皆様方のご支援ご協力をいただきながら、二戸広域全体でこれから益々進展する人口減少、高齢化社会に向けて取り組みを強めていかなければならないと考えているところでございます。
 皆様方におかれましては、どうぞ引き続きご理解とご協力を賜りますようお願いを申し上げる次第でございます。


 総会には、正会員67名中65名(うち委任状出席者37名)が出席し、以下の議案について審議した結果、満場一致ですべての議案が承認されました。

第1号議案 令和6年度事業報告及び活動決算報告承認の件
第2号議案 令和7年度事業計画承認の件
第3号議案 令和7年度活動予算承認の件
第4号議案 役員任期満了に伴う改選の件 

 役員改選についても、理事8名、監事2名全員の再任が承認されました。また、総会後に開催した理事会にて、理事長・副理事長が選任され、以下の役員体制で引き続き事業を進めてまいりますので、よろしくお願いいたします。

理 事 長  髙橋 浩(岩手県立二戸病院) 
副理事長  菅原 光宏(一般社団法人 二戸医師会(すがわら消化器内科))
副理事長  中田 勇司(社会福祉法人 いつつ星会)
理  事  森川 伸彦(二戸歯科医師会(森川歯科医院))
理  事   金澤 悟(二戸薬剤師会(堀野調剤薬局))
理  事   駒木 彬了(社会福祉法人 慈孝会)
理  事   菊池 英理子(公益社団法人 岩手県看護協会立 二戸訪問看護ステーション)
理  事   田中舘 淳一(特定非営利活動法人 カシオペア医療介護支援センター)
監  事   川村 英一(金田一診療所・浄法寺診療所)
監  事   泉山 武將(二戸市健康福祉部)

 令和6年度事業報告及び令和7年度活動計画については、こちらのページをご覧ください。 

 

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